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横浜みなとみらい21

パワースポットめぐり -横浜みなとみらい21-

神奈川県横浜市西区・中区


00 「みなとみらい」の略称で親しまれている、横浜みなとみらい21。
1981年(昭和56年)に一般公募された約2300点の中から「赤い靴シティ」との決選投票で選ばれたこの名前は、近年続々と誕生しているウォーターフロント都市の代名詞ともなっている。
21世紀型未来都市をイメージして計画的に行われている地区整備は数々のデザイン賞を受賞している。街の中心部には日本一高いビル「横浜ランドマークタワー」、そして「コスモクロック21」と呼ばれる大観覧車があり、水と緑と都市機能が溶け合った独自の美しい景観を誇っている。
2011年(平成24年)に開港120周年を迎えた横浜赤レンガ倉庫はこの地区の代表的な観光施設。来場者が2000万人を突破したほどの根強い人気はいまだ健在といえる。
古きよき港町としての歴史と、新たな未来が交錯するこの街はいまも進化し続けている。

「あぁ、あのときが、初めてのみなとみらいだ」

01
日曜早朝のみなとみらい線、馬車道駅。
この日は横浜ワールドポーターズ内で開催される展示会で一日中セッションを行う予定になっていました。
せっかく久しぶりに横浜へ行くのだから、ということでいそいそと早起きをし、少しだけ足を伸ばして赤レンガ倉庫にまずは向かうことにしました。
これでもかっ、というほどの雲ひとつない青空。抜けるように青いとはよく言ったもので。冬の澄んだ空気と日曜日のおだやかな雰囲気のなかを歩いていると、日だまりでまどろむ子猫のように次第に頭の中がぽわんとしてきます。

展示会用の重い荷物を詰め込んだキャスターキャリーをコロコロと引っ張りながらのんびり歩くこと10分。
歴史を感じさせる渋い琥珀色の建物が横一列に並んでいます。これを全部改修したなんて、横浜市はお見事!目の前に広がる童話の挿絵のような景色に、港町ムードが一気に高まります。異国情緒ってこういうのを言うのよね。思わずうっとりと古くて美しい倉庫群に見とれてしまいます。

120年。このレンガの色が改めてその時の重さを教えてくれます。何度も戦争や災害を乗り越えてきたんですね、もう、いま21世紀なんですよ。信じられますか?そう無言で偉大な先輩である建物たちに話しかけました。

02ここから船に乗ればどこにだって行ける。
港には、空港とはまたちがったそんな身軽さと自由さがあります。
ひょいっと乗りこんでしまえば世界と繋がる海にすぐに出られるのが船旅の最高なところ。飛行機には行って戻るという暗黙の了解と使命感がありますが、船にはなんだか「好きなだけ行っておいで」という気楽さと先が見えないドキドキが入り混じった不思議な感情がつきまといます。放任主義のおおらかさと厳しさ、とでもいうべきか。
赤レンガ倉庫のあるここ新港埠頭は第二次大戦後に連合国軍に接収され、長い間復興が遅れたといいます。すべての場所に何かしらの影を落としている戦争の破壊力は、やはり計り知れません。

平和な日曜日の朝に感謝しながらも、いまも世界中で起こる紛争のことを考えました。人間の歴史は戦争の歴史。その事実は21世紀中に塗り替えられるのだろうか?

03朝早いこともあってまだ店舗はどこも開いておらず、観光客の姿も数えるほどしかいません。数時間後にはたくさんの人で埋め尽くされるイベント会場もガランとしています。

それでも海へと続く赤レンガ倉庫沿いの道には自然と心をわくわくさせてくれるのが魅力。大きなクリスマスツリーが赤レンガに映えて余計にまぶしく感じます。
あと一週間に迫った聖なる良き日。夜のイルミネーションも綺麗だよと、そういえば誰かに聞いたことがあるな。次は夜に来てみよう。

くるっと港を一周したついでに裏へ回り込むと意外なものを見つけました。古墳のようにも見えるこんもりした緑と、倉庫とはまた違う遺跡の名残のような赤レンガたち。

一体何だろう?近づいて説明書きを読みます。
04どうやら、関東大震災で倒壊したために埋められていた横浜税関事務所の遺構、とのこと。横浜市には常々畏敬の念を抱いている私ですが、さすがにこれには驚きました。
そもそも赤レンガ倉庫はみなとみらい整備の一環として横浜市が国から取得し、5年以上もの歳月をかけて修復したからこそ今の美しい「赤レンガパーク」があるのです。

この遺構もその事業に伴いわざわざ発掘し保存しているというのですから、行政の徹底した仕事ぶりにただただ頭が下がります。
あの地震がどれほどすごかったのかを知る貴重な資料であることはもちろんのこと、私にとっては、横浜市が「みなとみらい」という街作りにどれだけ心血を注いだのかを知る重要な手がかりになりました。
誰かがが本気になって成し遂げたことは、いやがおうにも人の胸を打つ。私がみなとみらいを心底好きな理由がやっとわかりました。この近未来都市にはしっかりとした信念と、人間の温かな血が通っていたのです。

そろそろ展示会の時間が迫ってきました。
私とすれ違うようにして次々と休日を楽しもうという大勢の人々がやってきます。今日も賑やかな一日になりそうですね。最後にそう胸の中でささやいてから、赤レンガたちにウィンクしたいような明るい気持ちでその場を後にしました。

05たぶん、大学一年生だと思う。
あの一年間で、東京近郊のいわゆる観光スポットはひと通り行ったはずだから。サークルの仲間との突発的なドライブ。誰かが招集をかけたらそれが開始の合図。目的地もメンバーもなにも決めず、途中で行き先を変えては誰かをピックアップしたり降ろしたり。

ずっとみんなで笑い転げているうちにいつの間にか朝が来た。毎日がパレードみたいな日々だった。
いま思えば、みんな心細かったんだろう。初めての一人暮らし、初めての東京。なにもかもが自由だったけど、そのぶん孤独がいっそう深まっていた。

あぁ、あのときが、初めてのみなとみらいだ。
夏の夕暮れ、まるでローマのコロッセオのような円形の階段の中心に大きな広場があった。すり鉢の底のようなその場所で、大道芸人のパフォーマンスが今まさに始まろうとしていた。
ぐるりと周囲から見下ろす形で階段に座っている観客たちは、お世辞にも多いとは言えない。
どうせ待ち合わせまでの時間つぶしだから。そんなことを言いたげな顔が並んでいた。
そのなかで子供たちだけが、わくわくと瞳を輝かせて今か今かと楽しいことを待っていた。
ちょっと観ていこうよ、メンバーの中のひとりの女の子がにこにこして座り込んだ。
え~、とぶつぶつ文句を言いながらもみんなその子の無邪気な笑顔に負けてしまい結局は仲良く並んで座った。
06せっかくみなとみらいに来たのに。もっと夜景が綺麗なとこに行こうよ。
あとでね、とその子はまた笑った。

それぞれがいろんな痛みを抱えていたけれど、小鳥のように並んで羽を寄せ合っては暖め合いながらみんなでどうにか乗り越えた。たとえぺしゃんこに落ち込んでも、誰かがずっと黙って傍にいてくれた。

みなとみらいの夜景がぼんやりとにじんだ。どんなに孤独でも、ひとりじゃなかった。
10年以上経って再会したみなとみらいの思い出が、私にそう教えてくれていた。

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