愛宕神社(東京港区)

パワースポットめぐり - 出世の王道、愛宕神社-
東京都港区愛宕1-5-3
標高わずか25.7mながら東京23区内で最も高い愛宕山。
その山頂に位置するのが愛宕神社。
1603年(慶長8年)に徳川家康によって建立されたこの神社には、江戸の防火の神様として火産霊命(ほむすびのみこと)が主祭神として祀られている。愛宕神社正面の石段(男坂)は江戸三代将軍・徳川家光に絡んだ故事にちなみ「出世の石段」として有名。「この石段を登って参拝すると出世できる」といわれていることから多くの人が訪れる人気スポットになっている。
都心のビジネス街にありながらも周囲は豊かな自然に恵まれており、春には山一面に桜や梅が咲き誇る花見の名所でもある。
「出世の王道、これ如何に?」
寛永11年(1634年)、ある春の日の出来事。
時の将軍、徳川家光公が菩提寺である芝の増上寺へ参詣した帰り道、愛宕神社の前を通りかかりました。ふと見ると愛宕山には見事な梅が咲いています。そこで将軍様が鶴の一声。
「誰かあの梅を馬に乗っていますぐ取ってこい!」
現代でいう「ムチャ振り」ですが、さすがの猛者たちもこれには仰天。この急な石段を?下手をしたら自分も愛馬も命を落としかねません。
絶対に出来っこない。
そんな気まずい沈黙の中、突然ひとりの家臣が見事な手綱さばきでパカパカと一気に石段を登りきり、あっという間に美しい梅は家光公の元へと献上されました。その危険をかえりみない忠誠心と馬術の腕を高く評価された曲垣平九郎(まがきへいくろう)は、一夜のうちにその名を全国にとどろかせたといいます。
これがいわゆる「出世の石段」の由来です。
1月半ば、小春日和のお昼過ぎ。
以前から気になっていた愛宕神社をついに訪れることができました。
実際に目にしなければ本当のすごさがわからないもの、というのがこの世にはたくさんありますが、愛宕神社の「出世の石段」の急勾配も間違いなくそのひとつに数えられるでしょう。
「こ、これは・・・」
男坂と呼ばれる石段の下に立ち山頂を見上げた途端、家光公の家臣たちへ時を越えて同情の念が沸き上がります。
お殿様の命令とはいえ、さすがにこれはあんまりではなかろうか・・。ただ徒歩で登ろうという私ですら、想像以上の傾斜にかるく意識が遠のくほどなのです。と、同時に曲垣平九郎という人と愛馬の勇気に心底感心しました。よほどの信頼関係がなければ馬だってきっと逃げ出したはずです。無事で本当によかった。
感心してばかりもいられないのでまずは一歩、石段に足をかけてみます。
一段一段が高い上にコンクリートで均一にならされている訳ではないので結構でこぼこしています。
不安定な足場と眼前に迫る急斜面。こわい。とても、こわい。しかしこれも出世のため。
馬で登ることを思えばどうってことない。そう自分に言い聞かせ、足下に注意しながら一気に半分ほど登ります。
その数、40段。ということは、おそらく80段ぐらいあるのかな。この辺りでだいぶ石段にも慣れてきました。
ふぅと息をつき何気なく周りをくるりと見渡します。
「!!」下に広がる光景を見た瞬間、血の気が引き足と腰がふわふわと心もとなく泳ぎだします。
「あぁ、見るんじゃなかった。」
「まるでスキーのジャンプ台にいるみたいじゃない!」
しかし今さら後悔してもどうしようもありません。あと半分は確実に石段が残っているのです。とりあえず、じりじりと左に寄り、左手でしっかりと手すりをキープ。油断するとなぜか後ろを見たい衝動に襲われるため、意識を集中してそろりそろりと頂上を目指します。
これは一体なんの修行なのか。そうか、出世って、やっぱり自己との闘いなんだ。
そんなことを考えながらも残り44段を登り切り、なんとか無事にゴール!
やりました、私、出世します!そう思って見下ろした。
絶景と言っても過言ではないですが、撮ったあとすぐさま後ずさりしたことは言うまでもありません。
高層ビルの上からの夜景ならなんともないのに、天然でむき出しの高い場所はやはり独特の怖さがありますね。
都会のなかで生活していると、いつの間にか本能も麻痺しちゃうのかもなぁ。
港区愛宕という東京のど真ん中で、こんな原始的な恐怖を味わえるとは思いませんでした。
石段を登るとすぐの場所に鳥居が並んでいます。ビルの谷間にありながらも厳かさ漂う異空間。
こちらには主祭神の火産霊命(ほむすびのみこと)を始め、弁財天、大黒天、さらには天孫降臨の際に道案内をしたといわれる猿田彦、いわゆる天狗様も祀られています。
賑やかな宴のような境内ですが、都会の喧騒とは一線を画す結界のようなもので包まれていました。そんな中で、ランチタイムの会社員の方々がスーツ姿で続々と石段を登ってくる様は、こう言ったらなんですが、ほほえましいというか日本人の自然な信仰心をみた気がしました。
日常にこうして組み込まれることが、きっとなにより神様たちは嬉しいにちがいありません。

左が猿田彦、右が大黒様です。
昨年の夏に天河で初めてお会いした猿田彦さんですが、魔術師全開でビリビリとくるパワーはこちらでも健在でした。隣の大黒様は一転しておだやかで「まぁ寄ってきなはれ」といった感じ。ただの鳥居とあなどるなかれ。それぞれをくぐると、まったく別の次元に通じているかのようです。
そして、このさらに左手に愛宕神社の本殿があり、右手には社務所があります。
とてもここが山の頂上だとは思えないほどの広い空間が確保されていることに驚かされました。
ひっきりなしに沢山の人々が訪れるのに、どの場所も整然と綺麗な空気に保たれているのです。
しっかりと人々に手入れされていることに加えて、愛宕の自然の力がやはり強力な浄化作用になっているのでしょう。
なんとこちらの境内には美しい池までもがありました。
こんこんと沸き出す水の清らかな音色を聴くだけでも、この場所を訪れる価値が充分あります。
水の神、山の神、そして火の神。人間にはとても真似できない調和のとれた世界そのもの。そんな自然のエネルギーすべてを感じることができるばかりか、七福神の大黒様と弁財天様、猿田彦様までいらっしゃるのですから、この多彩な恩恵で出世できるのもうなずけるような気がします。
きっとこの場所でのお花見は豪華絢爛な神様たちとの楽しい宴にちがいありません。
こわい思いをしてがんばって登った甲斐がありました。やっぱりあの石段の急勾配にはちゃんと意味があったんだなぁ。
何事も楽ではないということですね。
じっくりとエネルギー補充をしてさぁ帰ろうと思った矢先、「登った以上は下りなければいけない」という真理に思い至りました。
そう、男坂を登って男坂を下りるのが、出世の王道コースといわれているのです。
あぁ、神よ!まるで人生の縮図のような、山あり谷あり石段あり、の一日でした。
しかし、みなさま、どうかご安心を。
男坂の隣にはゆるやかな「女坂」もちゃんとあります。
そして究極はこちらの愛宕神社、実はエレベーター完備なのです。
高所恐怖症だからといって出世に響くと言うことはけっしてありません。
がんばればちゃんと神様は見ていてくれるもの。
コツコツ真面目に仕事をすることが、やっぱり出世の王道コースなんでしょうね。
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