皇居外苑

パワースポットめぐり -皇居外苑-
「日出ずる国の」

都心で最大の緑地と水辺地を有している、皇居外苑。
昭和24年に旧皇室苑地の一部が国民公園として解放されて以来、都民の憩いの場、そして東京の名所として国内外からの観光客を集めています。
クロマツの点在する大芝生広場、江戸城のたたずまいを残す濠(ほり)、そして城門などの歴史的建造物。
それらが見事に調和した、日本が世界に誇る美しい公園です。

日本史の授業では必ず登場する幕末の大事件「桜田門外の変」。
今からちょうど150年前に井伊直弼暗殺の舞台となった桜田門で、当時を知るのはこの城門のみとなりました。
現在では、藩士にかわってたくさんの市民ランナーが颯爽と駆け抜けていきます。
皇居外苑内は信号機がないためにランニングコースとして人気が高く、2月に東京マラソンが開催されるようになってからというもの、都民にとってはランナーの聖地として特に知られることになりました。
都心では貴重なたくさんの緑と澄んだ空気があるこの場所なら、たしかに素晴らしい成果と御利益がありそうです。
広大なクロマツ林の間からは日比谷のオフィス街を一望することができます。
中央の広場では高村光雲作の名作として名高い楠木正成像が出迎えてくれますが、大財閥である住友家が作成し宮内庁に奉納したものとしても、よく知られています。
楠木正成は後醍醐天皇に忠義を尽くし、敗戦を承知で出陣した末に自害してその生涯を終えた武将です。
敵将である足利尊氏ですら彼の清廉で実直な人柄を偲び、亡骸を丁寧に遺族の元へ戻したと言われています。
そして現在も変わらぬ忠誠心で皇居を守り続けているかのような、この像の躍動感はまさに圧巻の一言。

外国からの観光客の人々も次々と立ち止まっては感嘆の声を上げ写真撮影をしていました。
きっと彼らには日本の「サムライ」のシンボルとして、この美しい像が記憶されるのでしょう。そんな光景をじっと見つめているうちに、私もすこし「サムライ」が誇らしく思えてきました。
皇居の周囲には37ヘクタールにも及ぶ濠が張り巡らされています。
江戸城の守りを固めるために造られた濠の水面に高層ビルが映りこむ様子は、なんだかタイムスリップをしたかのような不思議な光景にも見えます。
ぼんやりとそんな景色を眺めているうちに、急に誰かに心臓を掴まれたような感覚に襲われたことがありました。
それは東京に住んでから、この場所でしか味わったことのない、鈍くて青い痛みです。
「郷愁」というその感覚は、突然やってきてはすぐに去って行ってしまいます。
皇居外苑に似た大きな公園と濠がある地方の城下街で、私は生まれ育ちました。
物心がついた時からいつも日常の風景には、公園の木々と濠の豊かな水がありました。
毎日のように通ったプールやテニスコート、そして通学路。春の桜、秋の紅葉、冬の雪。
あの公園で様々な気持ちを味わうことで私はすこしずつ世界を知り、世界との関わり方を知りました。
あの場所以上にすべてを無条件に与え、許してくれた場所は他にどこにもありません。
私にとってあの場所は唯一の教室であり、故郷なのです。

あの頃の私と、今の私。
目の前には同じような光景が広がっています。
この景色から何を見いだすかは、もう誰も教えてはくれません。
でもそれは、自分ですべてを決められるということ。
ここで感じる痛みを、喜びに変えられたとき。
私はたぶん、ほんとうの自由を、手にすることができるはずです。
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